トレード期限を過ぎた今、冬の動きを予測していこう。
メジャーリーグのトレード期限が過ぎてから、すでに約1週間が経過した。
これはつまり、今オフに移籍の可能性がある選手について考える時期が来た、ということだ。
現代のMLBにおける現実としては、チーム、そしてその延長線上にいるファンもまた、球界のトランザクションを動かす要因を常に意識していなければならないということなのかもしれない。
業界の動きを十分に観察すれば、一見ランダムに見えるチーム同士の取引の応酬も、実はかなり予測可能なパターンであることがわかってくるだろう。
そうした前提のもと、この冬のトレード噂に名が挙がるであろう10人の選手をピックアップした。
下記のリストは「予想されるインパクトの大きさ」に基づき並べている。
1. Joe Ryan(ジョー・ライアン), 右投手, Minnesota Twins(ミネソタ・ツインズ)
もしツインズがア・リーグ中地区の闇へと沈んでいく覚悟を決めたのであれば、ジョー・ライアンやパブロ・ロペス(Pablo López, パブロ・ロペス)のような、2027年シーズン終了後にFAとなる選手へのオファーに注目するのは自然な流れだろう。
ライアンは、元々ネルソン・クルーズ(Nelson Cruz, ネルソン・クルーズ)とのトレードで獲得した巧みな補強の一例であり、現在では支配力のある速球を武器に平均以上の先発投手へと成長した。
彼の名前はトレードデッドラインの時点でも浮上しており、もし放出可能リストに載るようなことがあれば、多くの球団が興味を示すのは間違いない。
2. Freddy Peralta(フレディ・ペラルタ), 右投手, Milwaukee Brewers(ミルウォーキー・ブルワーズ)
ペラルタは過去5年間にわたり、ブルワーズ先発ローテーションの重要な一角を担ってきた。
しかし、ミルウォーキーの球団運営の現実として、常に将来を見据えた判断が求められる。
彼は2026年シーズン終了後にFAとなるため、もしトレードが行われれば、それはコービン・バーンズ(Corbin Burnes, コービン・バーンズ)やデビン・ウィリアムズ(Devin Williams, デビン・ウィリアムズ)の放出に続く動きとなるだろう。このタイミングで動けば、ドラフト補償による将来の戦力獲得よりも、より早く戦力となる可能性のある選手をリターンとして得られる。
もちろん、ブルワーズがFA前に必ず選手を動かすわけではない。
実際、ウィリー・アダメス(Willy Adames, ウィリー・アダメス)は例外的に契約最終年まで残留したケースだ。
そのため、ペラルタをあえて保持する可能性も残されているが、過去の事例から見ても、放出の可能性は十分に存在する。
3. Steven Kwan(スティーブン・クワン), 外野手, Cleveland Guardians(クリーブランド・ガーディアンズ)
クワンはトレードデッドライン直前にかなり名前が挙がっており、この冬にも再び同様の交渉が活発化する可能性が高い。ガーディアンズにとっては悩ましい存在だ。彼は打線の重要な一員であり、2027年シーズンまで球団保有下にある契約状況ではある。そして2025年9月で28歳を迎える彼だが、懸念材料は、近年の指標の低下だ。
特にスプリントスピードは2023年から毎秒約0.61メートル(約2フィート)減少しており、守備力を大きな武器とする彼のプレースタイルにいつ、どのような形で影響を及ぼすのかは見極めが必要である。
守備を中心に価値を生む選手だけに、この下降傾向は長期的なパフォーマンス評価に直結する重要な指標となる。
4. Sandy Alcantara(サンディ・アルカンタラ), 右投手, Miami Marlins(マイアミ・マーリンズ)
今季開幕前、アルカンタラはリーグ内で最も明白なトレード候補と見られていた。しかし、肘の手術からの不安定な復帰状況に加え、マーリンズが意外にもチームとして好調を見せたことで、球団はトレードデッドライン時に“安売り”する判断を避け、保有を選択した。
これによりアルカンタラは、今オフに向けて自らの評価を立て直すための時間を手にしたと言える。
2026年シーズンは契約上の最後の保証年にあたるが、2027年にはクラブオプションが設定されており、もしかつてのワークホース型エースとしての姿を取り戻す兆しを示すことができれば、このオプションは獲得を狙う球団にとって大きな魅力となるだろう。
5. Mitch Keller(ミッチ・ケラー), 右投手, Pittsburgh Pirates(ピッツバーグ・パイレーツ)
パイレーツは得点力不足の解消をオフシーズンでも継続して追求する見込みであり、その中でケラーは最も明白かつ注目度の高い放出候補の一人となる。
彼はこれまでの実績、将来的な伸びしろ、そして契約面でのコスト確実性という3つの要素を兼ね備えており、かなり多くの球団のニーズに合致する存在だ。
したがって、パイレーツとしてはこの価値を最大限に活かし、豊富な先発投手陣の層をトレード資源として利用しながら、2026年開幕までに打線の強化へと結びつけられるかが鍵となる。
6. MacKenzie Gore(マッケンジー・ゴア), 左投手, Washington Nationals(ワシントン・ナショナルズ)
ナショナルズは今オフ、極めて難しい判断を迫られる。
残されたゴア、および遊撃手のCJ Abrams(CJ・エイブラムス))の保有権期間を最大限に活かすべく積極的な補強へ動くべきか、それともさらに先送りし、より多くの有望株獲得を優先すべきか――。
決断をさらに難しくしているのは、2027年シーズン終了後にFAとなるゴアが、つい最近まで「不安定な中堅先発」タイプと評されていた経緯があることだ。球団がどちらの方向へ舵を切るのか、今後の動向に注目が集まる。
7. Brendan Donovan(ブレンダン・ドノバン), 二塁手, St. Louis Cardinals(セントルイス・カージナルス)
今オフ、ゼネラルマネージャーとして初めてカージナルスの編成を担うChaim Bloom(チャイム・ブルーム)がどのような動きを見せるのかはまだ不透明だが、ドノバンは極めて理にかなったトレード候補と言える。
最大の理由は、彼が29歳の誕生日と2027年シーズン終了後のFA権取得という節目に近づいていること、そして球団内には彼の後継候補(トッププロスペクトのJJ Wetherholt(JJ・ウェザーホルト)を含む)が控えている点だ。
ドノバンは、OPS+113または114を3年連続で記録しそうな左打ちのユーティリティプレーヤーであり、コンテンダー(優勝争いをするチーム)にとっては非常に魅力的な存在となるだろう。
8. Pete Fairbanks(ピート・フェアバンクス), 右投手, Tampa Bay Rays(タンパベイ・レイズ)
フェアバンクスは少なくとも1年以上、トレードの噂に名を連ねてきたが、今オフのどこかで移籍が現実になる可能性は極めて高い。評価すべきは、キャリアワーストの奪三振率にもかかわらず、依然として有効なリリーフ投手として機能している点だ。
それでも、来季の球団オプションは年俸700万ドル(約10.2億円)であり、プロスポーツ界全体から見れば必ずしも巨額ではないものの、レイズにとっては冬を迎える時点でキャリアで50イニング超を投げたシーズンが1度しかない投手に支払うには大きすぎる負担だ。
さらに、今期限りでBryan Baker(ブライアン・ベイカー)やGriffin Jax(グリフィン・ジャックス)といった投手を補強したことを踏まえれば、2026年にフェアバンクスが他球団でプレーしている可能性は高いと言えるだろう。
なお、同僚で左腕のGarrett Cleavinger(ギャレット・クリービンジャー)にも注目したい。
9. Josh Jung(ジョシュ・ジャング), 三塁手, Texas Rangers(テキサス・レンジャーズ)
ジャングは優れた三塁手だが、トレードの噂に名前が挙がる可能性がある理由はいくつか存在する。
まず、彼は初の年俸調停権取得シーズンおよび28歳の誕生日を間近に控えており、耐久性には依然として疑問符がついている(2024年開幕からこれまでにわずか130試合強の出場にとどまっている)。
レンジャーズには、トッププロスペクトのSebastian Walcott(セバスチャン・ウォルコット)がメジャー昇格間近まで成長しており、Corey Seager(コーリー・シーガー)やMarcus Semien(マーカス・セミエン)を動かすよりも、ジャングをトレードする方が容易と考えられる状況だ。
もっとも、ジャングが今オフに動くとしても、それは三塁から一塁へのコンバートといった内野の別ポジションへの変更にとどまる可能性もある。とはいえ、ワイルドカードを狙うチームとして頭に入れておく価値は十分にある。
10. Ryan Mountcastle(ライアン・マウントキャッスル), 一塁手, Baltimore Orioles(ボルチモア・オリオールズ)
マウントキャッスルもまた、長らくこうした「トレード候補リスト」の常連として名前が挙がってきた印象がある。
その理由はこれまでと変わらない。右投げ右打ちの一塁手で、FA(フリーエージェント)資格取得が近づいているという点と、所属するオリオールズはコーナー内野手の層が非常に厚い(トッププロスペクトのSamuel Basallo〈サミュエル・バサーロ〉を含む)。
ただし、今回はやや状況を複雑にする要素がある。それは、マウントキャッスルが今季、不調のタイミングを迎えてしまったことだ。この成績低下により、慎重を期すなら、彼をノンテンダー候補としても頭に入れておくべきだろう。
コメント