「なぜ今永は打たれないのだろうか?」
初めてMLBでの今永のピッチングを見て首を傾げた人も多いのではないだろうか。
普段100マイルをガンガン打つ強打者達が今永の4シームを空振りをしている姿に。しかも振り遅れたりボールの下を振っていたり。
「投げる哲学者」と呼ばれる今永の「凄さ」をスタットキャストを中心とした信頼できるデータで紐解いていこう。
実際の2024年~2025序盤にかけてのデータを確認しながら解説していこうと思う。
1. フォーシームの価値は速さだけじゃない。その「質」も評価される。
2024年、今永のフォーシームはStatcastが算出したInduced Vertical Break(IVB)で約19.3インチ(約49 cm)というIVBで残した数字は、100球以上投げた投手の中でMLBトップ10に入る数値でした【引用元:Statcast Leaderboard】。
Induced Vertical Break(IVB)とは、ボールが重力に逆らってどれだけ“落下せず浮いて見えるか”を表す指標。これにより、打者は「落ちる」と予想したスイングをして空振りや弱いコンタクトを誘発します。
つまりこの数字が高い=バッターが思ってるより「浮いて」見えているということです。
2. 高スピン+低リリース
よく「伸びがある速球」なんて言われ方もしますが今永のフォーシームは平均2,424rpmのバックスピンと、地面から5.49フィート(約1.67m)という極めて低いリリースポイントを特徴とします。
その結果、ボールは球速よりも“浮く”ように見え、打者にとって非常に打ちづらいものになっています。【引用元:MLB.com】。
3. フォーシーム×スプリッターの「ピッチトンネル」
今永のスプリッターは平均約82〜83 mphで、縦の落差は約34インチ(約86.36cm)、空振り三振を取れる確率は43.4%でMLB平均の36%を大きく上回ります【引用元:Statcast】。
フォーシームとほぼ同じ腕の振り、しかも理想的なリリースポイントから投げ込んでいるため、ギリギリまでバッターは区別できず、0‑2・1‑2など追い込まれたカウントに特化したデータではなんと、フォーシームで約17三振、スプリッターで約16三振とほぼ互角の結果になります。【引用:Fangraphs】
こちらは2025年シーズン途中の8月現在のデータです。


つまりバッターは「どどどどどっちだ」ってギリギリまで考えてしまっているということですね!



Statcast見ると心の中も見えるのか…



まだまだある今永の凄さ!以下に続く!
4. 制球力の高さと「効率の良さ」:K%とBB%が高い
四死球率は約2.8〜4.0%、三振率は約25%。これはMLBでもトップクラスの効率の良さ表しています。
制球の安定と奪三振を両立している証です。【引用元:Baseball Savant】
また、フォーシームはストライクゾーン上部が多く、スプリッターは下部とゾーン内で明確に使い分けているというデータがあります。



確かにスプリットでストライク取りにいってるシーンはよく見る気がする



強打者相手だとヒヤヒヤするよな笑
5. Run Value and Contact Suppression(コンタクトさせない力)
今永のフォーシームは2024年シーズンで+9〜のRun Valueを記録しており、これはMLBの全投手の中でも最も価値の高い速球の一つと評価です。【引用元:Statcast Pitch Value】
Run Value(ランバリュー)とは:Statcastが定義する指標で、特定の球種が相手の得点期待値をどれだけ減らしたかを表すものです。つまり+9〜+13のRun Valueは、その球が1シーズンで約9〜13点分の失点を防いだ効果があったということを意味します。
※筆者的に何より1番凄いのは平均球速が95マイル未満でこれを達成しているのは先発投手に限ると2024年シーズン終了時のデータでメジャーでは今永しかいない、という点です…。凄すぎますね。
下記はMLB公式からの抜粋データになります。


日本語読み&日本語訳ものが以下になります。
Shota Imanaga(今永 昇太) のフォーシーム:+9
Tyler Glasnow(タイラー・グラスノー) のフォーシーム:+9
Corbin Burnes(コービン・バーンズ) のカッター:+8
Luis Castillo(ルイス・カスティーヨ) のフォーシーム:+8
Hunter Greene(ハンター・グリーン) のフォーシーム:+8
Javier Assad(ハビエル・アサッド) のシンカー:+8
Ryan Pepiot(ライアン・ペピオ) のフォーシーム:+8



いやいやヤバいピッチャーのヤバい球ばっかりじゃないか…



こう見るとやっぱり遅い真っすぐが入るのは異質だよな
フォーシームのWhiff率(空振り率)は約21.2%に達しており、これはMLB平均(約17%)を大きく上回ります。
つまり球速を考慮しないとしても、フォーシームでこれほど多く空振りを奪える投手は限られていることがよくわかります。
さらに特筆すべきは、フォーシームに対するストライクゾーン内での被打率がわずか.137という点です。
これは、バッターがゾーン内の甘い球でもヒットにできていない=弱いコンタクトしかできていないことを意味します。通常、ストライクゾーン内は打者にとって“狙い球”になりやすいため、ここでこれだけ抑えられているのは極めて高い能力の証です。
総合的に見て、今永のフォーシームは打者の空振りを多く生み出すだけでなく、当たってもヒットになりにくい=強いコンタクトをさせない力が非常に強いことが証明されています。その結果、Run Valueが高く、試合の中で得点を許さない=勝利に繋がる投球ができていると評価されています。
いかがだったでしょうか?
平均より遅い球でもメジャーの強打者たちを打ち取れる理由がデータを見ると見えてきますね。
今永投手をまとめていたら元レッドソックスの上原投手もまとめたくなってきてしまいました。
リクエストありましたらやります!
二人のフォーシームのデータは似ているのか!?皆さんは「遅いけど凄い直球」で誰を思い浮かべますか?
リクエストありましたらまとめます!最後まで読んでいただきありがとうございました。
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