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フアン・ソトは7億6,500万ドル(約1,150億円)のメッツ契約での失望のスタートを経て、いかにして自身最高のMLBシーズンのひとつを築き上げたか

ニューヨーク・メッツ(New York Mets/ニューヨーク・メッツ)と総額7億6,500万ドル(約1,150億円)の契約を結んだフアン・ソト(Juan Soto)は、シーズン序盤こそ失望を招くスタートを切った。しかし夏以降の彼は、これまでのキャリアで見られなかった「パワーとスピードを兼ね備えた打者」へと変貌を遂げ、最終的に自身最高水準のシーズンを築き上げている。

メッツは崩壊寸前のシーズンを送っているものの、ソトはその混乱の中でこれまで以上に存在感を示している。彼は単なる出塁マシンとしての評価を超え、走塁面でも相手にプレッシャーをかける新たな武器を身につけた。

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チーム不振の中で孤軍奮闘するスター打者

ニューヨーク・メッツ(New York Mets/ニューヨーク・メッツ)は、ポストシーズン進出を逃す可能性が濃厚だ。少なくとも危機的状況にあることは間違いない。

火曜日の勝利に加え、ピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates/ピッツバーグ・パイレーツ)の援護もあり、シンシナティ・レッズ(Cincinnati Reds/シンシナティ・レッズ)をわずか1ゲーム差で抜き、ナショナルリーグの第3ワイルドカードの座を取り戻したが、まだ安泰とは言えない。

チーム全体で見れば、もしポストシーズンを逃すことになれば大失敗としか言いようがない。理由は明白だ。今オフに行った大型補強、総額3億4,000万ドル(約510億円)を超えるMLBでドジャースに次ぐ第2位の総年俸、昨季のナショナルリーグ優勝決定シリーズ(NLCS)進出、そして何より6月12日時点でメジャー最高勝率を誇っていた事実があるからだ。

そのオフ最大の補強のひとつとして、多くの人々が思い出すのは、フアン・ソト(Juan Soto)との15年総額7億6,500万ドル(約1,150億円)という記録的契約だろう。こうした大型契約とチームの失速が重なれば、短絡的で感情的な意見として「ソトのせいだ」と批判の矛先が向けられがちだ。しかしそれは全くの的外れである。

実際のところ、ソトは今季すばらしい成績を残しており、彼のキャリアの中でも屈指の充実したシーズンを送っている。野球は一人の力だけで勝敗を左右できるスポーツではないが、その中でソトは極めて高いレベルのパフォーマンスを発揮しているのだ。

ソトの圧巻スタッツと存在感 – キャリアハイを更新し、リーグ屈指のMVP級シーズンへ

フアン・ソト(Juan Soto)は今季、打率.267/出塁率.399/長打率.532(OPS+164)という圧倒的な数字を残している。加えて、二塁打20、三塁打1、本塁打42、打点104、得点118、盗塁36、WAR6.4を記録。

2020年の短縮シーズンを除けば、これは自身3番目に高いOPS+であり、WARもキャリア3位の水準だ。本塁打数は自己最多を更新し、打点・得点でもキャリアハイに迫っている。ナショナルリーグでは出塁率でトップに立っており、打率に難色を示す声があるとしても、リーグ平均.246を21ポイント上回っている点は見逃せない。
さらに盗塁数は、2021~24年の合計を今季だけで超えている。

ソトはBaseball ReferenceのWARでナ・リーグ3位、FanGraphs版でも5位に位置している。ナショナルリーグMVPはほぼ確実に大谷翔平が獲得すると見られているが、ソト(オッズ+2500、DraftKings調べ)も間違いなくリーグ屈指の存在だ。

「ソトは勝者ではない」という批判も成り立たない。2019年にはワシントン・ナショナルズ(Washington Nationals/ワシントン・ナショナルズ)でワールドシリーズ制覇を経験し、2022年にはサンディエゴ・パドレス(San Diego Padres/サンディエゴ・パドレス)でNLCS進出、2024年にはニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees/ニューヨーク・ヤンキース)で再びワールドシリーズへ駒を進めた。
ソトはその証明を十分に積み重ねてきたと言える。

そして2025年、ソトはリーグで最も価値ある選手のひとりとなっている。

確かにシーズン序盤はスロースタートで、契約の重圧が影響した可能性もある。
ただ単なる不調の一時期であった可能性も否定できない。6月5日時点では打率.229/出塁率.367/長打率.430にとどまっていた。しかしその時点でメッツは勝ち星を積み重ねており、以降ソトは打棒を完全に取り戻した。直近93試合では打率.293/出塁率.421/長打率.600、31本塁打を放ち、文字通りリーグ屈指の攻撃力を誇る打者へと復活しているのだ。

ソトが見せた走塁の進化 – メッツを牽引する新たな武器

フアン・ソト(Juan Soto)は今季、盗塁数でニューヨーク・メッツ(New York Mets/ニューヨーク・メッツ)をリードしている。そう、フランシスコ・リンドーア(Francisco Lindor)をも上回っているのだ。これまでのキャリアで1シーズンに二桁盗塁を記録したのは最高12回で、昨年はわずか7盗塁だった。しかし今季はメジャー全体でも上位5人を除けば誰よりも多くの盗塁を記録している。

盗塁企図は40回で、そのうち成功は36回。成功率は驚異の90%であり、リーグ平均77.7%を大きく上回っている。シーズンが進むにつれて盗塁企図の数も増加し、走塁への自信を深めていったことがわかる。4月終了時点ではわずか2盗塁(2企図2成功)、5月に5盗塁(5企図5成功)、6月は2盗塁(3企図)、7月には6盗塁(6企図6成功)とペースを上げた。そして8月には圧巻の11盗塁(11企図11成功)、9月もすでに10盗塁(13企図)を記録している。

「間違いなく、シーズン序盤から多くの努力を積み重ねてきた成果です」とソトはMLB.comに語っている。

「ファーストベースコーチのアントアン・リチャードソン(Antoan Richardson)は素晴らしい仕事をしてくれました。開幕からずっとサポートしてくれたので、すべての功績は彼にあります。
彼が僕をこの状況、この立場に導いてくれたからこそ、ここまでやれたのです。」

ソトは打撃だけでなく走塁でもチームを牽引する存在へと進化し、その攻撃力にさらなる厚みを加えている。

ソトが到達した歴史的パワー&スピード領域

前述のとおり、フアン・ソト(Juan Soto)は今季キャリアハイとなる42本塁打を放っている。加えて新たに開花した盗塁力により、MLB史における稀有な「パワー&スピードコンボ」の領域に到達した。

ソトは今季、MLB史上76回目となる「30本塁打・30盗塁(30-30)」シーズンを記録した。新ルールによる盗塁増加の影響で達成者は増えているものの、それでも快挙である。2023年に4人、昨季に3人、そして今季もすでに4人が達成しているが、メッツにおいて30-30を達成したのはダリル・ストロベリー(Darryl Strawberry)、ハワード・ジョンソン(Howard Johnson、3度達成)、デービッド・ライト(David Wright)、フランシスコ・リンドーア(Francisco Lindor)、そしてソトのみだ。

さらに、ソトは単なる30-30にとどまらない。MLB史上「40本塁打・30盗塁(40-30)」を達成したのは、これまで13選手による16回のみ。ハンク・アーロン(Henry Aaron)、ホセ・カンセコ(Jose Canseco)、バリー・ボンズ(Barry Bonds、2度)、エリス・バークス(Ellis Burks)、ジェフ・バグウェル(Jeff Bagwell、2度)、ラリー・ウォーカー(Larry Walker)、アレックス・ロドリゲス(Alex Rodriguez)、アルフォンソ・ソリアーノ(Alfonso Soriano)、ライアン・ブラウン(Ryan Braun)、ロナルド・アクーニャ Jr.(Ronald Acuña Jr.、2度)、クリスチャン・イェリッチ(Christian Yelich)、大谷翔平(Shohei Ohtani)、そしてソトだ。

さらに基準を「40本塁打・35盗塁(40-35)」に引き上げれば、達成者はさらに絞られる。ホセ・カンセコ、バリー・ボンズ(2度)、アレックス・ロドリゲス、アルフォンソ・ソリアーノ、ロナルド・アクーニャ Jr.(2度)、大谷翔平、そしてソトのみである。

これはまさに驚異的なシーズンだ。ソトがMLB史に名を刻む活躍をしているにもかかわらず、ニューヨーク・メッツ(New York Mets/ニューヨーク・メッツ)のプレーオフ進出が危うい状況にあるのは、彼以外のチームの問題を浮き彫りにしている。

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