ポール・スキーンズ(Paul Skenes)は、デビューからわずか2シーズンで防御率2.00という圧倒的な成績を残し、MLBで最も支配的な投手となった。その右腕は2025年にさらに磨きをかけ、初のサイ・ヤング賞獲得を確実にしつつある。
しかし、ピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates)は彼の快投を支えきれず、チーム全体としては失速を続けている。
スキーンズは既にリーグ屈指のエースとしての評価を得ていたが、今季は投球の完成度をさらに高めた。球速、制球力、変化球の質――すべての要素において「レベルアップ」を遂げた姿は、ただの有望株を超えた存在であり、MLB全体で最も恐れられるエースへと成長したことを示している。
Paul Skenes tonight:
— Platinum Key (@PlatinumKey13) September 5, 2025
6.0 IP, 2 H, 0 R, 1 BB, 8 SO
94 pitches, 65 strikes, 13 whiffs
HE HAS A 1.98 ERA THIS SEASON. JUST MADE THE DODGERS LOOK LIKE NOTHING. NL CY YOUNG. NOW. pic.twitter.com/Aur59tYnSc
ピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates)のエース、ポール・スキーンズ(Paul Skenes)は、水曜日の夜にシンシナティ・レッズ(Cincinnati Reds)戦でメジャー初のフルシーズンにおける32度目の先発登板を迎える。ナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得する大本命であり、もし受賞となれば、ニューヨーク・メッツ(New York Mets)のレジェンド、ドワイト・グッデン(Doc Gooden)に続き、史上2人目となる「新人王とサイ・ヤング賞を連続受賞する投手」となる。グッデンは1984年に新人王、1985年にサイ・ヤング賞を獲得している。
「多少は考えますね」
― サイ・ヤング賞を意識しているかと聞かれた先月のスキーンズの言葉(Pittsburgh Post-Gazetteより)。
「でも去年と同じです。まず、賞そのものは私が決めるものではない。投票で決まる以上、どうにもできないことです。それに、自分がやるべきことをやり、しっかり準備して投げ続ければ、結果は自然とついてきます。勝とうが勝てなかろうが、成り行きに任せるしかない。去年の新人王と同じです。そういうふうに考えています」
スキーンズは現在23歳。今季181回2/3を投げて209奪三振を記録し、規定投球回到達投手の中で防御率2.03、ERA+211、FIP2.43、Baseball ReferenceのWAR7.3でいずれもトップに立っている。FanGraphsのWARではデトロイト・タイガース(Detroit Tigers)のエース、タリク・スクーバル(Tarik Skubal)に次ぐ2位だ。
2023年ドラフト全体1位指名で入団したスキーンズは、瞬く間に球界屈指のエースへと成長した。球団でさえ、ここまで早く支配的な存在になるとは予想していなかっただろう。
しかし、チーム成績は彼の快投に応えることができていない。パイレーツは今季67勝89敗と、2023年の76勝86敗(スキーンズ加入前のシーズン)を下回ることが確定している。ポストシーズン枠が拡大した現在では、勝率5割前後のチームでも9月までプレーオフ争いに残れることが多い。
それにもかかわらず、パイレーツはその水準すら維持できなかったのだ。これはフロントと球団オーナーシップの失策を示す衝撃的な結果と言わざるを得ない。
以上を踏まえ、ここからはポール・スキーンズがこれまでキャリアでどれほど優れた投手であったか、そして現在どのように成長を続けているのかを見ていく。さらに、世界最高の投手を擁しながら勝てないピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates)が、本物のコンテンダー(優勝を狙えるチーム)へと生まれ変わるために必要なステップについて考察する。
スキーンズ、防御率とERA+で球史に名を刻む
昨年5月11日のメジャー初登板以来、ポール・スキーンズ(Paul Skenes)はここまで54先発、314回2/3を投げ、防御率2.00を記録している。その間に379奪三振を積み上げ、この2年間での支配力を示してきた。
スキーンズの防御率2.00は、1920年に始まったライブボール時代以降において、デビューから2年間で50先発以上を記録した投手の中で、ドワイト・グッデン(Doc Gooden)に次ぐ歴代2位の数字である。
投手 | 期間 | 防御率 |
---|---|---|
ドワイト・グッデン (Doc Gooden) | 1984-85 | 2.0013 |
ポール・スキーンズ (Paul Skenes) | 2024-25 | 2.0021 |
トム・シーバー (Tom Seaver) | 1967-68 | 2.47 |
ゲイリー・ノーラン (Gary Nolan) | 1967-68 | 2.51 |
アレック・マノア (Alek Manoah) | 2021-22 | 2.60 |
さらに、ERA+(Adjusted ERA)を用いるとスキーンズの評価は一層高まる。ERA+は、投手が登板する球場、リーグ全体の攻撃環境などを考慮に入れ、単純な防御率では比較が難しい異なる時代の投手を評価するための指標である。
ERA+は100がリーグ平均で、数値が高いほど優秀、低いほど劣っていることを示す。
ERA+で見ても歴代最高レベル
ライブボール時代(1920年〜)以降、デビューから2年間で50先発以上を記録した投手のERA+ランキングは以下の通りだ。
投手 | 期間 | ERA+ |
---|---|---|
ポール・スキーンズ (Paul Skenes) | 2024-25 | 212 |
ドワイト・グッデン (Doc Gooden) | 1984-85 | 176 |
アレック・マノア (Alek Manoah) | 2021-22 | 157 |
ハーブ・スコア (Herb Score) | 1955-56 | 156 |
ロイ・オズワルト (Roy Oswalt) | 2001-02 | 156 |
ERA+212という数字は、スキーンズがMLBデビューからの2シーズンでリーグ平均投手より112%優れていたことを示している。これは驚異的な記録であり、No.1とNo.2(グッデン)の差は、No.2とNo.12(2007-08年のティム・リンスカム/ERA+140)の差と同じだ。つまり、スキーンズの1〜2年目の支配力は、歴史的に見ても前例のないレベルにある。
さらなる進化の要因
LSU時代に懸念された直球を武器に変えた「スプリンカー」
今では信じられないかもしれないが、スキーンズがルイジアナ州立大学(LSU)からプロ入りする際には、フォーシーム・ファストボールに対する懸念が存在した。問題は球速ではなく、その「変化の乏しさ」にあった。
スキーンズはこれを克服するために、シンカー、あるいは「スプリンカー(splinker)」と呼ばれる球種を導入した。
時速150km台後半〜160km台(90マイル後半)の鋭い沈むボールは、打者をフォーシームに的を絞らせない効果を発揮し、彼の投球全体の質を押し上げる結果となった。
Paul Skenes, 98mph Fastball and 95mph Splinker, Overlay.
— Rob Friedman (@PitchingNinja) July 7, 2025
One of many examples of why Skenes is Impossible. pic.twitter.com/IF01tdSXgd
↑フォーシームとスプリンカーのやばさがわかる映像
左打者への配球の進化とチェンジアップの破壊力
多くの先発投手と同様に、ポール・スキーンズ(Paul Skenes)は打者の左右によって球種配分を大きく変えている。
- 対右打者:フォーシーム、シンカー、スイーパーをほぼ同じ割合で投げ、そこに少量のチェンジアップとカーブを混ぜる。
- 対左打者:フォーシームをシンカーの約2倍投げ、チェンジアップとスイーパーを同程度、そこに少しカーブを交える。
この左打者への配球の変化は特筆すべきだ。昨季のスキーンズは左打者に対し、フォーシームをシンカーの約2倍投げていた点は同じだが、非速球の中心はカーブだった。今季はカーブの割合を半減させ、その分スライダー系とチェンジアップを増やしている。
特にチェンジアップは圧倒的な効果を発揮しており、今季は打者を打率.095、長打率.119に抑え込んでいる。
スタットキャストが示す球種ごとの進化
Statcastの投球データ(各球種の結果に基づいてランバリューを算出する指標)によれば、スキーンズは2024年から2025年にかけていくつかの球種を大きく改善している。
Statcastによる球種別ランバリュー(Run Value)の推移を見ると、ポール・スキーンズ(Paul Skenes)がいかに2025年に「レベルアップ」したかが明確に分かる。
球種 | 2024年 | 2025年 |
---|---|---|
フォーシーム | +7 | +20 |
スイーパー | +5 | +10 |
チェンジアップ | +3 | +9 |
- +20ランという数値は個々の球種としては驚異的であり、+10でも非常に優秀な部類に入る。
- スキーンズのフォーシーム、スイーパー、チェンジアップはいずれも、その球種を300球以上投げた投手の中でトップ6に入っている。
比較対象として、同じく3つの球種でトップ6入りしている投手はギャレット・クロシェ(Garrett Crochet/シンカー、カッター、スイーパー)のみ。
また、2球種でトップ6入りしている投手には、ジェイコブ・デグロム(Jacob deGrom/フォーシーム、スライダー)、ネイサン・イオバルディ(Nathan Eovaldi/カッター、スプリッター)、ケビン・ゴーズマン(Kevin Gausman/フォーシーム、スプリッター)、クリストファー・サンチェス(Cristopher Sánchez/シンカー、チェンジアップ)がいる。
「球界最高投手」への裏付け
一見すると信じがたいが、スキーンズは今季さらにレベルアップを遂げた。特にチェンジアップの質の向上が顕著であり、その結果フォーシームの威力が一層引き立ち、投球全体の幅が広がった。
仮に彼が160km/h前後(upper-90s mph)のフォーシームとチェンジアップだけを投げていても十分に厄介な投手であるはずだ。
そこにシンカー、スイーパー、さらにカーブまで加われば――間違いなく「現役No.1投手」と呼ぶにふさわしい存在になる。
スキーンズを長期的に引き留められるか?
ポール・スキーンズ(Paul Skenes)をピッツバーグに長期的に留める――つまり球団のコントロール下である6年間を超えて残すためには、巨額の契約が必要となる。しかし、正直なところ、パイレーツのオーナーであるボブ・ナッティング(Bob Nutting)がそのような契約を提示する理由はほとんど見当たらない。ナッティングはMLBで最も倹約的なオーナーの一人、あるいは最もケチなオーナーとすら評されている。
以下は、球団史上最大規模となった契約一覧だ:
選手 | 契約時期 | 年数 | 契約総額 |
---|---|---|---|
ブライアン・レイノルズ (Bryan Reynolds) | 2023年4月 | 8年 | 1億675万ドル(約160億円) |
キーブライアン・ヘイズ (Ke’Bryan Hayes) | 2022年4月 | 8年 | 7,000万ドル(約105億円) |
ジェイソン・ケンドール (Jason Kendall) | 2000年11月 | 6年 | 6,000万ドル(約90億円) |
アンドリュー・マカッチェン (Andrew McCutchen) | 2012年3月 | 5年 | 5,150万ドル(約77億円) |
ブライアン・ジャイルズ (Brian Giles) | 2000年5月 | 6年 | 4,500万ドル(約67億円) |
球団史の恥部と、スキーンズ残留への唯一の道
この契約一覧は実に惨めなものだ。2000年にジェイソン・ケンドール (Jason Kendall) が結んだ6,000万ドル(約90億円)の契約が、当時ですら「控えめ」な規模であったにもかかわらず、20年以上にわたって球団史上最高額であり続けたという事実は恥ずべきことである。ボブ・ナッティング(Bob Nutting)は、勝利を本気で目指すオーナーに相応しいレベルでチームへ投資してこなかった。年俸総額の上限制(サラリーキャップ)が導入されようと、支出を増やす保証にはならない。必要なのは、オーナーが「勝ちたい」と心から思い、実際に行動に移すことだ。
こうした極端な倹約体質を考えれば、パイレーツファンがスキーンズがブライアン・ジャイルズ(Brian Giles)、ジェイソン・ケンドール、アンドリュー・マカッチェン、ジェイソン・ベイ(Jason Bay)、ゲリット・コール(Gerrit Cole)ら過去のスター選手と同じように、トレードで放出されるのではないかと身構えるのも当然だろう。だが、それは必ずしも避けられない運命ではない。パイレーツはスキーンズを残留させることが可能だ――ただし、そのためには球界屈指の超大型契約を提示する必要がある。
山本由伸の325百万ドル契約が参考ライン
スキーンズとの延長契約を考える上で、有力なベンチマークとなるのが山本由伸(Yoshinobu Yamamoto)がロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)と結んだ投手史上最高額となる12年・3億2,500万ドル(約4,875億円)契約だ。
- 山本は25歳シーズンを前に契約したが、日本でのプロ経験を積んでから渡米していた。
- スキーンズは来季24歳シーズンを迎えるため、年齢的にはさらに有利といえる。
- 大きな違いは、山本が完全なFA市場に出たのに対し、スキーンズはまだ球団の保有権下にある点だ。
それでも、スキーンズを長期的に囲い込むには、この水準に匹敵する規模が必要になるのは明らかだ。
仮にポール・スキーンズ(Paul Skenes)が長期契約を結ぶとした場合、以下のような金額が想定される。
年度 | 推定年俸 | 備考 |
---|---|---|
2026年 | 100万ドル(約1.5億円) | プレアービトレーション |
2027年 | 800万ドル(約12億円) | 初回年俸調停 |
2028年 | 1,500万ドル(約22億円) | 2年目調停 |
2029年 | 2,000万ドル(約30億円) | 3年目調停 |
2030年以降 | 3,500万ドル(約525億円) | FA年換算 |
スキーンズはすでに新人王(Rookie of the Year)を獲得しており、さらに今季サイ・ヤング賞の有力候補とされている。これは調停期間における年俸を大幅に押し上げる要素だ。参考例として、コービン・バーンズ(Corbin Burnes)はサイ・ヤング賞のみを引っ提げて調停に臨んだが、その3年間で650万ドル、1,001万ドル、1,564万ドルを得ている。スキーンズの2027〜29年の推定額は一見控えめに思えるが、投手の調停年としては極めて高額である。
球界最高額級の契約提示が不可欠
ポール・スキーンズ(Paul Skenes)をピッツバーグに長期的に留めるためには、現時点で投手史上最大規模の契約を提示するしかない。値切ろうとするのではなく、彼の心を動かすような金額を提示する必要がある。例えば3億5,000万ドル(約5,250億円)規模の契約ならば、十分に彼の注目を集めるだろう。
もちろん、オーナーのボブ・ナッティング(Bob Nutting)がスキーンズに記録的契約を提示する理由は乏しく、そのような巨額契約を結べば「では、その後フロントはどうやって周囲にコンテンダーを構築するのか」という疑問も生じるだろう。しかし、それはフロントオフィスの問題であって、スキーンズの問題ではない。今季の彼はほぼ最低年俸水準で投げているにもかかわらず、球団はコンテンダーを作れていない。それはスキーンズの責任ではないのだ。
さらにスキーンズはすでにキャリアの中で相応の収入を得ている。ドラフト時の契約金とプレアービトレーション・ボーナスプールを合わせれば、今季終了時点で通算収入は約1,500万ドル(約225億円)に達する見込みだ。一定の経済的安定は得ている。
したがって、パイレーツが交渉を引き延ばせば引き延ばすほど、スキーンズが延長契約に応じる可能性は低くなる。長期残留を望むのであれば、「今すぐ」動くしかない。
スキーンズの苦言 ―「このままでは無駄な一年」
ポール・スキーンズ(Paul Skenes)は最近、契約延長交渉について問われるとこう答えた。
「いいえ。シーズン中に話すつもりはありませんし、球団側もその点を尊重して、何も持ちかけてきていないと思います。なので、交渉は一切ありません」
そんなスキーンズだが、チーム強化の必要性については率直に言葉を残している。今季最後の本拠地登板後、彼は「2025年が“無駄な一年”になるかどうかは、ここから学び、改善できるかどうかにかかっている」と強い調子で語った。表向きは現在の選手たちについて述べていたが、実際にはフロントやオーナーにも矛先が向いていると解釈できる。
AP通信によると、スキーンズは次のように語った。
「やるべきことを学ばず、なぜ自分たちが目標を達成できなかったのか理解せずに終えるなら、それは無駄な一年です。そうなってほしくはない。個人としても、チームとしても、組織としても、必要な調整は分かっているはずです。あとは実行するだけです」
さらに、クラブハウスの現状についても踏み込んだ。
「このロッカールームには改善の余地があります。やるべきことは分かっているし、きっと新戦力の補強もあるでしょう。でも今の自分の関心は『ロッカールームの中で、今そして来年に向けて何ができるのか』ということです。そこには緊急性があり、その認識を持って行動する必要があるのです」
投手陣は盤石、打線は壊滅 ― パイレーツの構造的課題
今季のピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates)が特に苛立たしいのは、優れた失点抑止力を持ちながら、攻撃力の低さですべてを台無しにしている点にある。
今季のチーム防御は1試合あたり失点4.04で、MLB全体で7番目に少ない。これはポール・スキーンズ(Paul Skenes)だけの成果ではない。スキーンズが投げたのはチーム投球回のわずか13%に過ぎない。スキーンズ、ミッチ・ケラー(Mitch Keller)、ババ・チャンドラー(Bubba Chandler)、さらに健康なジャレッド・ジョーンズ(Jared Jones)が揃えば、十分にコンテンダーになれる投手基盤が存在するのは間違いない。
打線の壊滅ぶり
しかし、その強固な投手陣を無駄にしたのは、壊滅的な攻撃力である。
- 1試合平均得点:3.60(30位)
- 本塁打:112本(30位)
- チーム打率:.231(28位)
- 出塁率:.305(26位)
- 長打率:.350(30位)
オフの最大補強だったスペンサー・ホーウィッツ(Spencer Horwitz)は、ファーストで.257/.338/.402という成績。まずまずの数字だが、コンテンダーの中軸を担える水準ではなく、6〜7番打者として適正なラインに留まる。
若手野手育成の失敗
さらに深刻なのは、有望株の野手が育っていないことだ。
- トップ10指名のニック・ゴンザレス(Nick Gonzales/2020年全体7位)とヘンリー・デイビス(Henry Davis/2021年全体1位)は「普通の選手」に留まり、デイビスはそのレベルにすら届かない。
- ワンディル・クルーズ(Oneil Cruz)は成長どころか後退しており、チームにとって壊滅的打撃となっている。
- キーブライアン・ヘイズ(Ke’Bryan Hayes)は打撃面で伸びず、最終的にトレードされた。
投手の育成は成功しているが、打者育成は完全に機能不全に陥っている。
改善への道筋
守備位置の優先補強と年俸増額
明るい材料を挙げるとすれば、ここまで打線が壊滅的であれば改善余地は大きいということだ。
今季のチーム年俸は8,700万ドル(約131億円)に過ぎず、来季確定しているのは3,100万ドル(約47億円)のみ(調停権選手を除く)。仮に年俸総額を1億1,000万ドル(約165億円)に引き上げても、依然としてMLB下位10傑の水準だが、戦力には大幅な改善をもたらす可能性がある。
補強優先度は遊撃、三塁、左翼の3ポジションだ。今季これらのポジションはWARでリーグ最低水準の生産性にとどまっている。2025年の現状から2026年にリーグ平均レベルの選手を獲得するだけでも、複数勝分の上積みが見込める。もちろん口で言うほど簡単ではないが、実現可能な課題である。
結論 ―「スキーンズ在籍中」に勝負するために
現状のパイレーツには、投手陣を支えるだけの打撃基盤が存在しない。デイビス、ゴンザレスといったトップ10指名を無駄にし、クルーズの停滞は致命的だった。小規模球団としてプレーオフを狙うには、野手育成力の抜本的改善と適切な補強への投資が不可欠だ。
スキーンズがパイレーツにいるうちにコンテンダーへ返り咲く唯一の道は、攻撃力の立て直しである。 それを怠れば、再びエースを無駄に浪費する球団の歴史を繰り返すことになるだろう。
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