7月3日時点で、ロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)はナ・リーグ西地区で9ゲーム差という盤石の首位を築いていた。
前年のワールドシリーズ王者であるドジャースは、この時点で4連勝中かつ直近18試合で15勝と圧倒的な戦績を残しており、13人もの投手陣が故障者リスト入りしていた中でも、ムーキー・ベッツ(Mookie Betts)が本来のスーパースターらしいパフォーマンスを発揮していない状況でこれを実現していた。
まさに「ドジャース一強」という一言に尽きる状況だった。
しかし、その9ゲーム差のアドバンテージは、もはや存在しない。
火曜日の夜、ドジャースはロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)との試合で延長10回の末にサヨナラ負け(LAA 7-LAD 6)を喫した。
一方でサンディエゴ・パドレス(San Diego Padres)は、サンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants)を5-1で下し、両チームは68勝52敗で並び、首位タイに浮上した。残り試合数は42試合である。
「今は新しいシーズンだ」と、火曜日の敗戦後にロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)のデーブ・ロバーツ(Dave Roberts)監督はMLB.comを通じて語った。
「スコアボードを見れば分かる。我々はもっと良いベースボールをして勝つ方法を見つけなければならない。」
視点によっては、この日の試合で最も印象的、あるいは最も痛恨だったプレーは、大谷翔平(Shohei Ohtani/ショウヘイ・オオタニ)が古巣相手に放ったライナーが、攻撃の流れを断ち切る6-6-3のトリプルプレーに終わった場面だろう。これはフリーウェイ・シリーズ史上初のトリプルプレーであり、ロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)にとっては球団史上わずか8度目の記録となった。
7月3日に9ゲーム差をつけて首位に立って以降、ロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)の戦績は12勝20敗と大きく失速している。一方、その同じ期間でサンディエゴ・パドレス(San Diego Padres)は22勝12敗と大きく勝ち越しており、この間、ナショナル・リーグ全体でサンディエゴを上回る成績を残したのは、圧倒的な強さを誇るミルウォーキー・ブルワーズ(Milwaukee Brewers)のみである。
さらにドジャースは、この7月3日以降の勝利数がピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates)を下回り、コロラド・ロッキーズ(Colorado Rockies)をわずか1勝上回るだけにとどまっている。
これは、ドジャース(Los Angeles Dodgers)が単独首位から陥落するのは6月13日以来初めてであり、また、パドレス(San Diego Padres)がシーズン終盤で首位タイ以上の位置につけるのは2010年9月25日以来のこととなる。
「まだまだ試合はたくさん残っている」――パドレス(San Diego Padres)の中堅手ジャクソン・メリル(Jackson Merrill)は、火曜日の勝利後にMLB.comを通じてこう語った。「あちら(ドジャース)のことは我々にはコントロールできない。今この瞬間に全力を尽くすだけだ。」
昨季2024年シーズン、パドレス(San Diego Padres)はナ・リーグ西地区(NL West)のタイトル争いでドジャース(Los Angeles Dodgers)を最後まで追い詰めた。第157試合終了時点でも、首位ドジャースとの差はわずか2ゲームだった。
しかし、サンディエゴはその逆転を完遂できず、さらにナ・リーグ地区シリーズ(NLDS)では2勝1敗とリードしながらドジャースに逆転を許した。
今年、パドレスはその雪辱を果たし、2006年以来となる地区優勝を成し遂げることを目指している。
ここでは、ナ・リーグ西地区の優勝争いについて押さえておくべきポイントを紹介する。
1.両チームとも主力が復帰、チーム自体が回復しつつある
興味深いことに、ドジャース(Los Angeles Dodgers)は、今季最も健康な状態に近づいているにもかかわらず、順位表で後退している。ブレイク・スネル(Blake Snel)とタイラー・グラスノー(Tyler Glasnow)は肩の故障から復帰し、ブレイク・トレイネン(Blake Treinen)も肘のトラブルを乗り越えて戦列復帰。大谷翔平(Shohei Ohtani)は直近の登板で4イニング・54球まで投げられる状態に回復している。依然としてトミー・エドマン(Tommy Edman)、エンリケ・ヘルナンデス(Enrique Hernández)、佐々木朗希(Roki Sasaki)、タナー・スコット(Tanner Scott)、カービー・イェーツ(Kirby Yates)らは離脱中だが、複数の主力が戻ってきたことで、ドジャースは着実にベストメンバーに近づきつつある。
この状況はパドレス(San Diego Padres)にも当てはまる。マイケル・キング(Michael King)は数か月にわたる肩の故障から、先週末に復帰。
ダルビッシュ有(Yu Darvish)は先月シーズンデビューを果たし、現在調子を上げつつある。
パドレスの故障者リストはドジャースほど長くなく、メジャーのIL入りはジョニー・ブリート(Jhony Brito)とジョー・マスグローブ(Joe Musgrove)の2名のみだが、それでも先発の柱2人を欠いていたのは事実だ。
今季、キングとダルビッシュの先発登板数は合計18試合で、これはグラスノーと佐々木の合計登板数より1試合少ない。
2.サンディエゴの最大の強みはブルペン
遊撃手レオ・デ・ブリース(Leo De Vries)という球界屈指のプロスペクトを、リリーフ投手のメイソン・ミラー(Mason Miller)獲得のためにトレードするのは“やりすぎ”だったのか?
既に球界屈指と言えるリリーフ陣を抱えていたため必要性に疑問を持つ声もあった。
しかし、「良いリリーフ投手が多すぎて困る」ということは決してない。
そして、ミラーは並みのリリーフ投手ではない。
彼は現在のMLBにおいて最も圧倒的な存在の一人であり、その投球は試合終盤の局面を支配できるレベルにある。
両チームの違いは、火曜日の試合で如実に表れた。
パドレス(San Diego Padres)は序盤で先制し、その後はデビッド・モーガン(David Morgan)、ジェイソン・アダム(Jason Adam)、エイドリアン・モレホン(Adrian Morejon)、ロベルト・スアレス(Robert Suarez)の4人の救援投手が4回1/3を無失点で封じた。ジャイアンツ(San Francisco Giants)の最後の13打者のうち11人を打ち取る完璧なリレーで、ジェレマイア・エストラーダ(Jeremiah Estrada)やミラー(Mason Miller)といった、多くのチームでクローザーを務められる投手すら投入する必要がなかった。
一方、パドレスのブルペンが試合を締めたその同じ夜、ドジャース(Los Angeles Dodgers)はアレックス・ベシア(Alex Vesia)が1点差の場面でセーブを失敗。
シングルヒット、四球、送りバント、犠牲フライで同点に追いつかれた。9回にはベン・カスパリウス(Ben Casparius)がベシアを救援したが、延長10回にサヨナラ打を許す結果となった。さらにその2日前には、ブレイク・トライネン(Blake Treinen)とベシアが終盤2イニングで3本塁打を浴び、リードを逆転され敗戦している。
7月31日のトレードデッドライン以降、パドレスがメイソン・ミラーを、ドジャースが現在故障中のブロック・スチュワートをそれぞれ獲得して以降のブルペン成績は、数字だけ見ても明らかな差がある。
指標/チーム | ドジャース | パドレス |
---|
ERA(防御率) | 3.79(MLB17位) | 3.09(MLB10位) |
被OPS | .801(MLB22位) | .579(MLB5位) |
奪三振率 | 23.4%(MLB13位) | 30.4%(MLB1位) |
勝利確率貢献(WPA) | -1.24(MLB28位) | 1.55(MLB2位) |
WAR | 0.0(MLB21位) | 1.2(MLB2位) |
このデータが示す通り、パドレスのリリーフ陣は奪三振率、被OPS、WARなど複数の主要なスタッツでリーグ上位に位置しており、トレードデッドライン終了後にその優位性がさらに強まった。
一方、ドジャースは防御率こそ平均的な数値に収まっているが、被OPSやWPAでは下位に沈み、勝負どころでの失点や逆転を許すケースが目立っている。
ドジャース(Los Angeles Dodgers)の最大の強みはスター選手の存在
ドジャースの最大の強みは、「地区優勝は層の厚さ(Depth)で勝ち取り、ポストシーズンのタイトルはスター選手で勝ち取る」という考え方ができることだ。
現代のMLBにおいて、最も優れたチームであってもシーズンを通じて合計で40〜50人の選手を起用することが珍しくない。例えば、ここ数カ月で快進撃を続けているミルウォーキー・ブルワーズ(Milwaukee Brewers)は、2025年シーズンにすでに23人の野手と28人の投手(※野手登板は除く)を起用している。
地区制覇には、文字通り「チーム全員の力」が必要不可欠なのだ。
しかし10月(ポストシーズン)に入れば、主役はスター選手だ。もっと正確に言えば、「スター級のパフォーマンス」が勝敗を分け、そしてそのレベルの活躍を最も期待できるのも、やはりスター選手である。チームがワールドシリーズを制するのは、フレディ・フリーマン(Freddie Freeman/フレディ・フリーマン)が片足の故障を抱えながら4試合連続本塁打を放つ時、コーリー・シーガー(Corey Seager/コーリー・シーガー)が5試合で6打点を挙げる時、あるいはヨルダン・アルバレス(Yordan Alvarez/ヨルダン・アルバレス)が160km/h(100 mph)の速球を投げる左腕から約137m(450フィート)の特大本塁打を放つ時である。
このように、ドジャースはスター選手の存在そのものが、NL西地区(NL West)そしてポストシーズンにおける最大の武器となる。
パドレス(San Diego Padres)にも、マニー・マチャド(Manny Machado)とフェルナンド・タティスJr.(Fernando Tatis Jr.)というスター選手がいる。
特にタティスは、ポストシーズン通算13試合で打率.375/出塁率.474/長打率.854という圧倒的な成績を残している。一方、ドジャース(Los Angeles Dodgers)には唯一無二の存在である大谷翔平(Shohei Ohtani)に加え、フレディ・フリーマン(Freddie Freeman)、そして勝負所での勝負強さを疑う余地のないムーキー・ベッツ(Mookie Betts)が揃う。ロサンゼルスがトップのスター選手で優位に立っていると言っても不公平ではないだろう。
パドレスがこのNL西地区(NL West)の逆転劇を完結させるには、マチャドとタティスがチームを牽引する必要がある。もし彼らがスター選手らしい活躍を見せられなければ、その時点で勝負は終わりだ。同様に、もしベッツ、フリーマン、そして大谷が期待通りのパフォーマンスを発揮できなければ、ドジャースの地区優勝も危うくなる。
とはいえ、ロサンゼルスはロースター全体に高いレベルのタレントを抱えており、その分だけ不測の事態に対応できる「誤差の許容度(margin for error)」はパドレスよりも大きいと言える。
4. まもなく直接対決
ロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)とサンディエゴ・パドレス(San Diego Padres)は、今月中に何度も顔を合わせる予定だ。
8月15日〜17日 @ドジャー・スタジアム
8月22日〜24日 @ペトコ・パーク
今週末はロサンゼルスで3試合、翌週末はサンディエゴで3試合が行われる。まさに好カードだ。両シリーズの間にロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)はコロラド・ロッキーズ(Colorado Rockies)と3試合を戦う一方、サンディエゴ・パドレス(San Diego Padres)はサンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants)との4連戦を控えている。このスケジュール面ではドジャースにやや有利といえる。しかし、今後11日間でドジャース対パドレスが6試合組まれている事実は、間違いなく注目に値する。
シーズンシリーズでは、現時点でドジャースが5勝2敗とリードしている。この直接対決成績は、順位が並んだ場合のタイブレーカーとして適用されるため極めて重要だ。ドジャースは残り6試合で2勝すればタイに持ち込めるが、その一方で2勝4敗に終われば地区2位に転落する可能性も高い。
要するに、わずか6週間前には9ゲーム差をつけていたドジャースを、パドレスが完全に追い詰めた格好だ。
NL西地区の優勝争いはすでに白熱しているが、この2週間で行われる直接対決の計6試合は、その緊張感とドラマをさらに高めるだろう。9月には両チームの直接対決がないのは残念だが、この2つの週末のカードは十分すぎる見応えを提供してくれるはずだ。
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