セントルイス — カージナルス全体で“伝説”と同義語となっている背番号4──元名捕手ヤディアー・モリーナ。
その姿が、わずか2試合だけではあるが、再びカージナルスのダグアウトに戻ってくる。
10度のオールスター選出、9度のゴールドグラブ賞、そして2度のワールドシリーズ制覇を誇るモリーナは、金曜と土曜のカブス戦で再びユニフォームに袖を通し、カージナルスのダグアウトに入る予定だ。

初めて座ったまま盗塁刺すキャッチャーを見たときは調べまくった!



今の時代でもここまで衝撃的な肩のキャッチャーはいないよなぁ…
2004年から2022年までカージナルス一筋でプレーしたモリーナは、8月上旬に私用でセントルイスを訪れる予定があり、その際に球団へ連絡を入れ、スタジアムでユニフォーム姿で過ごす機会がないか打診したという。
「本当に“ホーム”に帰ってきた気分だよ」
金曜、カージナルスのブルペン捕手ヨエル・ポッゾと時間を過ごした後、モリーナはこう語った。
「このフィールドで選手やコーチたちと時間を過ごせること、そして今夜はファンのみんなとも交流できる。最高の経験になるよ。」と語った。
ゲストコーチとしてのヤディアー・モリーナ
モリーナは、次回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でプエルトリコ代表の監督を務める予定であり、将来的にはMLBの監督就任を目指していることを公言している。今回、カージナルスのオリバー・マーモル監督から直接招待され、ベンチで隣に座ることになった。
マーモル監督は、捕手として約20年の経験を誇るモリーナが、若いカージナルスの選手たちに大きな影響を与えると確信している。
「これは本当に素晴らしい経験になると思うよ、いろんな意味でね」
とマーモル監督。
「チームにとっても、選手たちにとっても、そしてファンにとっても素晴らしいことだ。
たとえ2日間だけだとしても、そのレベルの経験値を持つ人物がダグアウトや選手の周りにいるというのは価値がある。彼は“成功とは何か”を独自の方法で伝えることができるユニークな才能があるよ。」
モリーナの歴史的な偉大さ — 守備の象徴、数字が証明する“捕手史上屈指”の男
ヤディアー・モリーナは、単なる“カージナルスの象徴”にとどまらず、MLB史に残る名捕手の一人である。
筆者の個人的な意見だが鉄壁の守備力だけで殿堂入りを目指せる選手だと思っている。
MLBの長い歴史の中で、「守備の象徴」という称号を真に冠せられる捕手は多くない。
ヤディアー・モリーナは、その中でも圧倒的な数字と記録で、他のレジェンドたちと並び立つ存在だ。
1. 捕手刺殺数 歴代1位
15,122刺殺(Putouts)
MLB捕手史上最多。かつての王者イバン・“プッジ”・ロドリゲス(14,864)を上回る。
この数字は、19年間の安定した守備出場と耐久性を物語っている。
2. Defensive Runs Saved(DRS)捕手歴代1位
184 DRS(FanGraphs計測 2002年〜)
ジョー・マウアー(+92)やバスター・ポージー(+86)を大きく引き離す圧倒的トップ。
単に盗塁阻止やブロッキングだけでなく、投手配球・捕球技術など守備全般の質が異次元だった証拠だ。
3. 盗塁阻止率と補殺記録
- 盗塁阻止率:40.3%(リーグ平均 約27%)MLB史上歴代1位
- 盗塁阻止率リーグ1位:4回
- 捕手補殺数リーグ1位:3回
プッジ・ロドリゲス(46%)と並び、現代野球における“強肩の象徴”。
4. バッテリー記録 — Wainwrightとの不滅コンビ
バッテリー勝利数:213勝(MLB歴代1位)
歴史上、これほど長期間にわたり同じ投手とバッテリーを組み、勝ち続けた例はない。多くの野球評論家が「二度と破られない記録」と評価している。
5. チームへの計り知れない貢献度
ワールドシリーズ制覇:2回(2006, 2011)
ポストシーズン出場:13回
ナ・リーグ優勝:4回
ジョニー・ベンチ(WS2回)やバスター・ポージー(WS3回)と堂々と肩を並べる稀な存在のキャッチャーだ。
6. 打撃でも進化した万能捕手
通算:2,168安打 / 176HR / 1,022打点 / 打率.277
シーズン最高打率:.315(2012年)
OPS.874(2012年)でMVP3位に輝いた。
後半キャリアで打撃力も大幅に向上させ、守備型捕手のイメージを覆した。
守備力、投手リード、試合への影響力は、イバン・ロドリゲス、ジョニー・ベンチ、カールトン・フィスクといった“捕手の殿堂入りレジェンド”と並び称されるレベルであり、「21世紀最高の守備型捕手」という評価も揺るがない。
他の名捕手との比較(通算)
捕手 | 刺殺数 | DRS | 盗塁阻止率 | 安打数 | WS優勝 |
---|
モリーナ | 15,122 | 184 | 40.3% | 2,168 | 2 |
プッジ・ロドリゲス | 14,864 | N/A | 46.0% | 2,844 | 1 |
ジョニー・ベンチ | 9,291 | N/A | 43.5% | 2,048 | 2 |
バスター・ポージー | 8,045 | 86 | 33.7% | 1,500 | 3 |
この2日間、ブッシュ・スタジアムのファンは再び“ヤディ”の背番号4を目にする。そして、その存在感と知識は、若いカージナルスの選手たちに計り知れない影響を与えるはずだ。
ヤディアー・モリーナ(43歳)は、今回のカージナルス選手・コーチ陣との時間が一度きりにならないことを願っているという。今季中にあと数回チームに合流したいと考えており、早ければ2週間後、カージナルスがフロリダでマーリンズ(8月18〜20日)およびレイズ(8月21〜22日、8月24日)と対戦する際に合流する可能性がある。
「ここに来て捕手陣を助け、アドバイスを送り、彼らを成長させるのが目的だ」とモリーナ。
「自分はただ手助けするためにここにいる。何かを変えようとして来ているわけじゃない。若い選手たちを可能な限り助けたいし、そして何よりこのゲームを楽しみたい。」
「プレーすること自体は恋しくないけど、フィールドにいることは恋しい。セントルイスに戻ってこられたことは、自分にとって大きな意味がある。この街の人たちは自分と家族を大切に思ってくれている。今日は自分にとって大きな夜になるし、とても楽しみにしている。」
引退後初のブッシュ・スタジアム帰還
今回の復帰は、モリーナが2028年の初回投票で殿堂入りが有力視される中、2023年シーズン最終戦以来初のブッシュ・スタジアム登場となる。ちなみにこの試合では、200勝右腕で親友のアダム・ウェインライトが引退した試合。
球団によれば、モリーナはジョン・モゼリアク編成本部長付き特別補佐に就任していたが、家庭の事情でその職務の多くを果たせなかった。2022年シーズン終了とともに現役を退き、チームをナ・リーグ中地区優勝、そしてポストシーズン進出へと導いた(これが現時点でのカージナルス最後のポストシーズン進出)。
モリーナは引退後も「毎日野球を見ている」と語り、現役時代に培った膨大な知識は将来の指導者キャリアにそのまま生かせると自信を見せている。
「監督業は自分の計画であり将来の目標だ。ただ、今は家族のために時間を使うべきだと思っている。だが将来は指導者になりたい。ステップ・バイ・ステップで進むつもりだ。」
マーモル監督が語るモリーナの指導者資質
現役最終シーズンにモリーナを指揮し、それ以前も長年ベンチコーチとして彼のプレーを間近で見てきたオリバー・マーモル監督は、この殿堂級捕手が将来名将となるためのすべての資質を備えていると断言する。
「彼は驚異的な野球頭脳を持ち、教えることへの情熱がある。常にゲームの流れを的確に把握しているし、そうしたすべての要素が組み合わさることで、必ず高いレベルで監督を務められるはずだ。」
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